岐阜県岐阜市 担当者にインタビュー

取り組みを始めるに至ったきっかけ、経緯などをご説明いただけますか?

岐阜県岐阜市 健康部 健康増進課 スマートウエルネス推進係 岡田崇正 氏

 本市ではかねてより健康立市を掲げ、ウオーキングの推進や筋トレ体操をはじめ様々な健康政策に力を入れてきました。2018年2月、柴橋市長が就任し、これまでの健康政策を基礎として新たにクアオルト都市を実現していきたいとの強い思いを示しました。クアオルト健康ウオーキングは市長の肝煎りプロジェクトとしてスタートいたしました。私たち担当職員も、今回のクアオルト健康ウオーキングに携わり、岐阜市がクアオルト都市としての潜在力があることを実感しています。

 日本のほぼ中心にある濃尾平野の北部に位置する本市は、市内の中心部に緑豊かな金華山、百々ケ峰がそびえ立ち、清流長良川が流れ、また、歴史文化としての、岐阜城、岐阜公園、川原町、ぎふ長良川鵜飼いなど「岐阜市ならでは」の資源にも恵まれ、旅館街には長良川温泉もあります。

 市内の身近な場所に、クアオルト健康ウオーキングに適した多様な地形があることを活用し、歴史文化資源を付加価値に加えて、中京圏はもとより全国からのアクセシビリティに優れていることも後押しとなれば、全国でも珍しい「都市型クアオルト」が実現するのではと考えています。

 まずは市民の健康増進を図りながら、「クアオルト」というブランドにより、今までとは少し異なる視点で、岐阜市をPRすることで新たなツーリズムの構築ができるのではないかと考えました。

関係者に対して理解してもらうためにプレゼンをするのは、かなり大変ではないかと思うのですが、苦労したところなどがあれば伺えますか?

 クアオルト健康ウオーキングは、単なるウオーキングではなく、まさに「人の健康は、まちの健康」であり「まちづくり」です。

 今回、担当部署が健康増進課となったわけですが、クアオルト健康ウオーキング導入の先にある将来像を、関係部署と共有できるようなプレゼンとすることを第一に考え連携して進めました。

 特に「本物志向の観光まちづくり」の中での「クアオルト施策」が展開できるよう、観光部署とは念入りにプレゼン内容を組み立て、オール市役所で推進できるよう、市長をトップとした推進本部の設置、さらには「産、学、医、民、官」体制強化のための協議会の発足を目指しています。

 また、保健・医学の視点からも注目いただくために、市の保健師はもとより、有識者、市医師会の協力も不可欠であると考え、準備をしてきたところです。

クアオルト健康ウオーキングを活用して解決したいことはなんでしょうか?

 本市では、平成14年度から「ぎふ市民健康基本計画」を策定し、この計画もすでに第三次計画となります。健康の三大要素は、運動、栄養、休養であり、市民が運動習慣を身につけ、からだもこころもリフレッシュできる社会環境を充実させていく必要があります。

 ウオーキングについては、生活習慣病予防のための身近な運動として、効果が認められ、市民の皆さんもよくご存知ですが、なかなかその機会がないというのが現状です。

こういったことから、運動習慣のあまりない方や、野山を歩きたいけどちょっと不安という方にご参加いただき、実際の行動変容に繋げていきたいと考えています。

色々な健康増進方法がありますが、クアオルト健康ウオーキングを導入するに至ったポイントはなんでしょうか。

 本市では、「歩きたくなるまちづくり」として、歩行空間の整備と健康啓発を一体的に行うとともに、健康づくり拠点の整備も進めてきました。

 市内各地区ではウオーキングマップを作るなど、市民の自発的な健康づくり活動の素地も豊かであり、20年前から保健師地区担当制を採用して、地域の保健活動を担っています。

 クアオルト健康ウオーキングは、自然の野山を活用するという、いわば非日常的な部分があり、スポーツクラブの室内や、まちなかを歩くこととは、大きな違いがあります。

 四季の移り変わりを感じ、小鳥のさえずりを聞きながら、実践指導員と一緒に安全で効果的に歩く、新しい形のウオーキングとして、地域の皆さんに提案できると考えています。

健康プログラムと合わせて、どんな特色をみせたいでしょうか?

 現行の「歩く」ライフスタイル啓発としての日常生活における身体活動量の底上げに加え、生活習慣病予防のため、企業への健康経営支援の充実を図りたいと考えています。

 現在企業は、従業員の健康に力を入れていますので、今後、例えば、愛知県の企業などから、日帰りツアーで保健指導の対象となった従業員の方々にクアオルト健康ウオーキングに参加して頂き、楽しんで運動習慣を身につけてもらい「岐阜っていいよね」「また来たいね」と言っていただければと思っています。

 これは私たち関係者にとっても「まちの魅力」の再発見につながり、相乗効果が生まれることで、観光の誘致、産業振興、農産物の活用など様々な分野への波及が期待できます。クアオルト健康ウオーキングと組合せた、ヘルスツーリズムなどの滞在体験型観光への展開、さらにはスマートライフステイ構想にもつながります。

 また、岐阜県内では飛騨市、白川村でもクアオルト健康ウオーキングを実施していますので、こういった県内の市町村との情報交換や連携は非常に重要です。「健康になれる岐阜」として、広域的な連携も視野に入れ、県庁所在市・中核市におけるクアオルト施策の実例として、他の自治体のまちづくりの一助となる取り組みになればと考えています。