長崎県西海市 担当者にインタビュー
取り組みを始めるに至ったきっかけ、経緯などをご説明いただけますか?
長崎県西海市農林緑推進課 里中秀明 氏
西海市は「脱炭素社会の実現」に向けた取り組みのひとつとして、森林・林業の振興に力を入れていますが、令和2年度に森林サービス産業推進地域に登録されました。登録後、全国の様々な優良事例を知ることになり、ちょうどそのころ個人的に健康のためのウオーキングを始めたこともあって、クアオルト健康ウオーキングに関心を持ったことがきっかけです。
特に検討を始めて間もない頃、日本クアオルト研究所の方にお越しいただき、市の健康ほけん課や商工観光物産課(現・ふるさと資源推進課)の職員とともにお話を伺ったことで、市として連携して取り組む必要性や方向性がまとまったことが、その後のスムーズなアワード申請につながりました。
首長や他部署に対して理解してもらうためにプレゼンをするのは、かなり大変ではないかと思うのですが、苦労したところなどがあれば伺えますか?
森林サービス産業という視点でスタートしたため、健康ウオーキングなのになぜ農林緑推進課が担当するのか説明に少し手間がかかりましたが、特に苦労はありませんでした。逆に説明を進める中で各課が抱える課題解決にこうしたら活用できるのではないかと積極的な提案が相次ぎました。その後、医療分野、森林環境教育、観光など産官学医が連携し、西海市クアオルト研究会(現協議会)の立ち上げ、杉澤西海市長が山形県上山市への視察、ウオーキング体験や上山市長との意見交換を行ったこと、研究会のメンバーで宮崎県のクアオルト認定コースを視察・体験したことで議論が深まり、円滑な導入に向けての一体感がいっそう高まったように思います。
クアオルト健康ウオーキングを活用して解決したいことはなんでしょうか?
西海市は県内でみると高血圧や肥満の割合が高く、一人当たりの医療費も県平均より高い傾向にあります。このため、現在、市が行っている減塩・野菜摂取の指導にクアオルトを組み合わせ、まず市民の健康寿命の延伸と健康格差の縮小を図りたいと考えています。
また、本市は観光資源に恵まれているものの、有名な観光地を有する長崎市と佐世保市の中間に位置するため、通過型観光が主体という課題があります。現在の(農林漁業)体験型観光にクアオルトを活用することで、交流人口の拡大や滞在型観光へのシフトを進めたいと考えています。
三つ目の課題は、森林所有者の高齢化や担い手不足、採算性の悪化などを背景とした、森林の適切な保全と森林サービス産業の創出です。クアオルトの導入を柱とした新たな森林空間利用コンテンツの開発を行い、森林の健全化とともに山村の活性化に取り組みたいと考えています。
クアオルト健康ウオーキングを導入しようとおもった理由はありますか?
まず、気候性地形療法を取り入れたウオーキングだということです。西海市の山、川、海、島などの豊かな自然や変化に富む地形を活用して歩くことで、森林空間をはじめ新たな魅力を引き出してくれるのではないかと期待しています。
また、医科学的な根拠があることも理由のひとつです。このことは健康の見える化や健康づくりのモチベーションを高めることにつながります。現在、長崎大学の先生方の協力を得て、本市の認定コースを使いウオーキングの効果を検証する準備を進めています。市民の健康寿命延伸のための活用はもちろん、近いうちに健康経営企業や観光客を対象とした受け入れも進めたいと考えています。
健康プログラムと合わせて、どんな特色をみせたいでしょうか?
クアオルトの特徴を最大限活かし、継続した取り組みを行うためには、ガイドの確保・育成が最も重要だと考えています。西海市では、クアオルトの専任ガイドをスタートに森林浴ファシリテーターや森林インストラクターの3つの資格を持つ総合的なガイドを育成することにしており、心身の健康づくりや森の魅力を体感し楽しめるなど、様々なニーズに応えることができる体制を整えたいと考えています。
また、最終的には、西海市内全域をたくさんの魅力が詰まった「ぎゅぎゅっと!西海まるごとクアパーク」として、「森もひともまちも元気になれる」ウエルネスの聖地を目指したいと考えています。