愛知県豊橋市 担当者にインタビュー

取り組みを始めるに至ったきっかけ、経緯などをご説明いただけますか?

愛知県豊橋市 健康部 健康増進課 健幸なまちづくりグループ
安田 恵 氏、髙橋 拓也 氏、森 彩華 氏

 豊橋市は、愛知県や全国に比べ糖尿病や高血圧症の患者数が多いことが健康課題として挙げられ、野菜の摂取量や働き世代の運動習慣が低い現状にあります。こうしたことから、ウォーキングアプリの開発やウォーキングイベント等の開催を通じて、誰でも手軽に始められる「歩く」を推進してまいりました。しかし、これまでの取組では、「健康無関心層」が多くを占める働き世代への訴求や「運動の継続性」、「高血圧や糖尿病患者の減少」に寄与することが難しいと感じておりました。

 そのような中、日本クアオルト研究所の方からクアオルト健康ウオーキングに関するお話を伺う機会があり、本市の魅力を生かした新たなウォーキング手法として活かすことができないかと考えたことがきっかけです。3年の検討期間を経てアワード申請に至りましたが、その間、日本クアオルト研究所の方には何度も相談させていただき、構想を具体化していきました。

クアオルト健康ウオーキングを活用して解決したいことはなんでしょうか?

 豊橋市では、平成31年度に「健幸なまちづくり条例」を制定し、市民の誰もが住んでいるだけで生きがいや希望を持ちながら、健康で安心して暮らすことのできる社会を目指しています。「運動しましょう」という直接的なアプローチではなく、「健康無関心層」を含め自然と健康に導かれる社会環境づくりを実現したいと考えています。

 令和4年度に行った健康づくりに関するアンケートでは、意識的に運動を心がけている人の割合が52.6%と、前回調査(平成28年度)に比べて10ポイント以上減少していました。こうしたことから、令和5年度に策定した健康とよはし推進計画(第3次)では、「本市の自然を生かしたデジタルウォーキングコースを整備し、アプリを活用した効果的なウォーキングの機会を提供する」としており、クアオルト健康ウオーキングの活用を健康増進計画に位置付けています。

 また、クアオルト健康ウオーキングを軸に、本市のウォーキングアプリ「あいち健康プラス」を活用したデジタルでのサポートや、医療機関と連携した医療専門職のガイド養成、とよはし健康宣言事業所への新規メニュー化等新たな取組へ展開させ、働き世代を中心とした「健康無関心層」に訴求し、本市健康課題の解決につなげていきたいと考えています。

色々な健康増進方法があるが、クアオルト健康ウオーキングを導入しようとおもった理由はありますか?

 市が推進するこれまでのウォーキング施策に親和性が高いことや、海と山を持つ温暖な地域ならではの本市の魅力を市民に伝えたいことが理由です。

 デジタル庁による令和5年度Well-Being調査によると、本市は、「自然景観」の客観的な評価が高い一方で、主観的な評価は低く、市民自身は本市の自然景観を「魅力に感じていない」人が多いという実態が分かりました。そこで、本市の魅力や特色ある自然を取り入れたクアオルト健康ウオーキングの実施で自然景観の価値を示し、その魅力を伝えることで、「また自然環境にきたくなる」「また歩きたくなる」等、自然環境への関心が高まり、心身の健康づくりにつながることを期待しています。

健康プログラムと合わせて、どんな特色をみせたいでしょうか?

 本市の魅力を最大限に生かした「とよはしクアオルト健康ウオーキングコース」を整備し、ウォーキングアプリ「あいち健康プラス」を活用した、利用者の安全・安心なウォーキング体験をデジタルでサポートします。具体的には、デジタルコースマップをアプリに搭載し、GPSによる現在地把握でコースを誘導します。心拍数計測ポイントの表示や血圧記録をアプリ上で行うことで、利用者は、自身の変化を常に確認することが可能となります。更に、アプリのチーム機能を活用し、利用者同士のコミュニティ形成を図ることで、ウォーキングを継続するためのモチベーション向上にもつなげたいと考えています。

 また、関係機関等と連携し、クアオルト健康ウオーキングによる健康データ改善効果の検証を実施し、エビデンスの蓄積を進めるほか、健康経営支援プログラムを企画し、市内企業へ支援メニューとして提供することにより、働き世代への直接的な健康支援を実現します。

クアオルト健康ウオーキングの普及・発展に向けて、どのようなパートナーシップや連携を考えていますか?

 本市は、豊橋商工会議所及び協会けんぽ愛知支部との3者で健康経営推進に関する協定を締結し、健康経営を推進する事業所の認定と支援並びに表彰を毎年行っています。クアオルト健康ウオーキングを新たな健康経営支援メニューの一つに加え、豊橋商工会議所や協会けんぽ愛知支部と連携し、市内事業所への幅広い周知と、活用促進を図ります。

 また、クアオルト健康ウオーキングが実際に及ぼす健康効果を測定し、更なる活用推進につなげるため、参加者の血圧等健康データを取得し、関係機関等と連携した分析・評価を進めます。